My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
応えてしまえば、認めてしまえば、体は従順だった。
あんなに抗うことには動かせなかった体が、快楽を求めれば素直に従う。
絡む指を握り返して、熱い舌を蕩ける程に絡め合う。
目の前のこの男から与えられる、熱が欲しい。
もっと気持ちよくなりたい。
疼く体の奥底まで貫いて、掻き乱して、いっぱいに満たして欲しい。
「ん、ん…っふ…」
求め合う口付けに、カチリと互いのマスカレードマスクが軽くぶつかり音を立てる。
ティキが顔を退けば、濡れた唇を開けて切なげに雪は吐息を洩らした。
「…欲しい?」
滑らかな声で、甘く問われる。
その響きにさえも体は疼く。
限界だった。
「っ…」
交えた互いの粘液をこくりと嚥下して、雪は微かに頷いた。
その一連の動作を見つめていたティキの瞳の奥に、狂喜が宿る。
嗚呼、と溜息をつきたくなる。
どんなに抗おうとも従わざる終えない無力な存在。
弱くて無垢で哀れにさえ思うちっぽけな個。
そんな存在が自ら身を堕とし欲望に染まる瞬間とは、何故こうも昂ぶらせてくれるのか。
餌に誘き寄せられた小鳥の羽に、食らい付いた蛇のように。
後はゆっくりその身を飲み込んで、じわじわと溶かしていくだけ。
小鳥が気付いた時には、もう後戻りはできない。
「いい娘だ」
込み上げる嗤いは呑み込んで、ティキは優しく銀色のマスクへと口付けた。
自身のベルトのバックルに手を伸ばす。
カチャリと、器用に片手でそれを外した。
「大変だティッ…何してんのォオォオオ!?!!!」
その空気を壊す勢いで開け放たれた扉から、飛び込んできた男が一人。
先程の出来事を思い起こさせるようなデジャヴ感。
シェリル・キャメロットである。