My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
優しい愛撫だった。
その中に時折混じる、甘美的な刺激。
ゆっくりと内側から溶かされていくような感覚は、味わったことがない。
(どう、しよう…きもち、い)
霞む頭の隅でどうにか思考を紡ぐ。
見ず知らずの男に体を弄られているというのに、嫌悪感が見つからない。
つぷりと、蜜壺を潜る指が更に増える。
「んぅっ」
「一度その熱を解放させてやらないと。溜め込んでも身を焦がすだけだよ」
だから、ほら、と。
促す声は砂糖のように甘い。
胸を弄んでいた手が、やんわりと雪の脚を押し開く。
愛液で濡れそぼった小さなショーツは、ほとんど役目を果たしていない。
力の緩んで蕩けた内部を、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて掻き乱される。
震える手でシャツを掴んだまま、雪は目の前の胸に顔を埋めた。
ほんのりと苦味の残る、煙草の染みた匂い。
神田からは一度も感じなかった匂いだ。
「(ユウじゃ、ない、のに…)ぁあっん、く…ッ」
「きゅうきゅう締め付けてきてる。…イキそ?」
快楽には従順に反応を示す体に、自然と力が入る。
問いに言葉で返せはしない。
掠れた声で喘ぐだけの雪に、ティキの手は優しく後ろ髪を梳いた。
「いいよ。イって」
「ふぁッぁっ」
囁く耳元に口付けを一つ。
ヒクつく粘膜の柔い所をなぞり上げられ、簡単に高みへと押し上げられた。
仰け反る体は大きな手に支えられ、倒れることはなかった。
煙草の香りに包まれたまま、髪を梳く手が背中を労わるように撫でてくる。
「よくできました」
「ふっ…」
「怖いことなんて何もなかっただろ?」
膣の中から引き抜かれる長い指。
とろりと蜜を纏うその指を霞む視界の隅で捉えながら、雪はゆっくりと息をついた。
先程よりは呼吸ができるようになった気がする。
それは彼の言う通り、一度熱を解放させたからなのだろうか。
「気持ちいいことだけ」
「…っ」
しかし甘い声で囁かれると、下腹部の奥が微かに疼く。
それは身に覚えのある感覚だった。
指だけではない。
熱く猛るもので貫かれる刺激を、一つに交わる心地良さを、知っているからこそ。
(…足り、ない…)
その快感を、体は欲した。