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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



半ば引き摺るようにしてジャスデビを連れ去るシェリルは、去り際にぱちんとティキにウィンクを飛ばした。
受け止めた彼の表情は引き攣ってはいたが、あからさまな嫌悪感は見せなかった。



「でも一応仕事は仕事だからね。ワイズリーの所へは競売が終わった後にしてもらうよ」

「わかってる。悪いな」

「君に貸しができたと思えば軽いものさ。ホラ行くよ」

「だから引っ張んなって…!」

「ヒ〜!」



ぱたんと閉じるドアに、薄暗い通路が更に暗さを増す。
それでもシェリルの目に、不満を露わにするジャスデビの表情は見て取れた。



「何が血生臭い思い出にさせてやりたくない〜だ。キザ野郎が」

「彼はああいうふうに千年公に育てられたからね。だから社交界でティッキーはいつも花形なのさ。身形や作法だけじゃなく、女性への姿勢が紳士そのものだから」

「ヒ〜…デロにはそんなふうに見えないけど…最初はあの人間に興味なんて全然なかったのに」

「そうだね」



双子の耳から手を離し、ティキより更に細長い切れ目を瞑ると、シェリルはにこりと笑った。



「人間に慈悲を向ける姿も、人間を玩具とする姿も、そのどちらも彼の素。だからこそティッキーは魅力的なのさ」

「ヘッ、つまり胡散臭い奴ってことだろ」

「そーそー。気紛れなところもあるし〜」

「ま、君達程わかり易いノアはそういないだろうよ…」

「あ?喧嘩売ってんのかゴラ!」

「はぁ"あ"ん!?!!」

「………(そういうところだって、全く…)」






























「───さて、と…連れてく前に、少しは体を綺麗にしておかないとな」



ドアの外の気配が遠退いたことを確認しながら、ティキは再びベッドへと歩み寄った。
雪の手を取り持ち上げれば、触手に塗り付けられた体液のようなものが肌を照らす。
その様にはあからさまにティキも顔を顰めた。



「お嬢さんも気持ち悪いだろ?」

「っ…」



しかし返された弱々しい反応は、同意のようには見えない。
僅かに身を捩りながら、ティキに握られた細い腕は小刻みに震えている。
健常者であれば体調不良のサインとでも思うところだが、ティキは雪の現状を知っていた。



(ああ、"そっち"の方が問題か)



問題は体外ではなく体内に在る。

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