My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「さて。競りは一時中断して、ここからは余興を楽しんで頂ければと思います。今宵の華は、東洋の若き娘。彼女の処女が赤く淫らに染まる瞬間を見逃してはいけません」
「っ…ぅ…」
「そうそう。彼女は実に生きの良い娘でありましてね。薬漬けにされていてもこの通り。幸か不幸か、気丈な意思を保っている。この意思ごと肉体を支配される様は、さぞ見物でしょう」
手慣れた様子で進行するリッチモンドが、今度は注目を雪へと集める。
一斉に集う視線は朧気な雪の感覚も身震いさせた。
この感覚は、知っている。
「今宵娘を味わえる者は、僭越ながら私の独断で指名させて頂きました。先月のバンケットで一番の目玉を買って行かれた、マクドウォール公爵!さぁ、此方へどうぞ」
再び拍手が巻き起こり、黒い群衆の中から一人の男性が舞台の前へと赴いた。
「やあ、嬉しい褒美だ。どうもありがとう、伯爵殿」
「此方こそ、いつもお世話になっております。公爵様の鮮麗した手解きで、このうら若き娘を召して下さいませ」
「ふむ。ふむ。成程確かに、生きの良さそうな娘だ」
丁寧で上品な物腰のやり取りだが、内容はただの猥談だ。
マクドウォールと呼ばれた男は、グレーの髪も口髭も丁寧に整えられた清潔感溢れる中年男性だった。
表情は身に付けたマスカレードマスクで掴み取れないが、聞こえる声は穏やかなもの。
しかしマスク越しの瞳と視線が重なったかと思えば、ぞくりと雪の体に再び悪寒が走った。
この感覚は、知っているのだ。