My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「とにかくティムに一度無線を入れてみて、神田。私達も雪の様子が知りたいし」
『…仕方ねぇな』
今回の任務では、幾度となくリナリーの存在が大きさを物語っていた。
それは現在も有効らしく、リナリーが指示すればゴーレム越しの低い声も大人しくなる。
ブツリと途切れる無線に、やれやれとリナリーが吐息を零した時だった。
「ぃ!痛っなんッわぁ!?」
「この…ッいきなりなんだコイツ…!」
ざわつく広間の一角。
誘われるように目線を向けたリナリーとアレンが捉えたのは、今正に話していたもの。
「アレン君、あれって…」
「ティムっ!?」
金色に光るゴーレム、ティムキャンピー。
それが、とある貴族の青年のリボンタイを咥え込み、ぐいぐいと引っ張っていたのだ。
「あれ、あの双子じゃない?フレッドとジョージ」
引っ張られていた者に二人は見覚えがあった。
リッチモンドが姿を見せる前に言葉を交した、例の赤毛の双子だ。
「なんであの二人の所にティムが…」
「とにかく止めよう、アレン君。あのままじゃ目立ち過ぎるよっ」
駆け出すリナリーに急いでアレンも続く。
彼らが目立ってしまえば、そこにティムキャンピーも混じえているのだ。
最悪、黒の教団と悟られてしまう。
「ティムっ何やってるんだ放せっ」
「二人共、声は抑えてっ」
「へっ?君らは…っ」
「少年少女?」
「ガゥガゥッ」
「いいから放せ、話を聞くからっ」
アレンの登場にはティムキャンピーも勢いを弱めた。
その隙に丸い金色のボディを、ジョージのリボンタイから引き離す。
「一体二人が何をしたって言うんだ」
「おい、心外だな少年。僕らは何もしてないぞ」
「急にその生き物がジョージに噛み付いたんだ」
「ティムは理由もなしに乱暴なんてしないわ。何か理由があるのよ」
「ひとまず此処を離れましょう。皆こっちへ」
リナリーの言う通り、ティムキャンピーが理由もなしに暴挙に出るなど考えられないこと。
周囲の目線から逃れるように、捕まえた相棒をジャケットの中に隠しながらアレンは双子を人気のない所へと連れ出した。