My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
『何任務中にイチャついてんだコラ』
「わっか、神田っ?」
「うわ…そっちこそ何盗聴してんですか。趣味悪」
突如響いたドスの利いた声は、リナリーのスカートの影から。
そこからぴょこりと顔を出したのは、リナリー専用ゴーレム。
慌てるリナリーとは反対に、アレンの声も急降下するように低くなる。
「大体、君と雪さんがダンスに興じている時は僕ら無線切ってあげてたんですけど?イチャついてんのは何処の誰ですかね」
『何言ってやがる。あれは鼻の下伸ばしたゲス野郎共を煙に巻く為にしただけだ』
「どうだか。それより盗み聞きなんて趣味悪いですよ。さっさと自分の仕事して下さい」
『用事があって無線入れたに決まってんだろ阿呆か。おいリナ、伯爵の様子はどうだ』
「え、と。変わった様子は、ないよ。展示室に向かう様子も見られないから、まだ大丈夫だと思う。雪が何か言ってきたの?」
『いいや。あいつ、無線切ってやがる』
「そうなの?」
「安易に話せない状況なのかもしれませんよ。隠密行動となれば」
『無線は切んなって釘刺しておいたのにか』
「時と場合があるでしょ」
全く、と呆れつつもアレンは溜息をついた。
其処らの雑草並に他人に関心を示さない神田が、ここまで気を回すのは雪に対してくらいなものだ。
「心配なんですか?雪さんは僕より場数も経験値もありますよ」
『そんなこと知ってる。テメェより場数も経験値も俺の方が上だ』
「……エエ、ソウデスネ」
ピキリと笑顔で青筋を一つ。
しかしリッチモンドの傍で下手に騒ぎは起こせないと、アレンは怒り上げていた肩を下げた。
「そんなに心配なら、ティムに無線入れればいいですよ。ティム、雪さんについてるみたいなんで」
『別に心配なん…早くそれを言えクソモヤシ』
「はぁ?人の親切心をなんだと…!僕はモヤシじゃありません!」
「もう、駄目だよ無線で喧嘩なんかしたらッアレン君っ」
「す…すみません」
しかし些細な気遣いもゴーレム越しの神田の粗暴さに、あっという間に崩れ去ってしまう。
ついまた肩を怒らせるアレンを、リナリーが咄嗟に嗜めた。
「神田もっ」
『…チッ』
名前一つで暴君を黙らせるところは、流石幼馴染と言おうか。