• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第17章 蓮の湖畔で君を知る



「ありがとう、か…」


 花畑の一角にあった湖の畔に腰を落ち着けて、空を仰ぐ。

 ティエドール元帥と今までしっかり話したことはなかったけど、言葉一つ一つが酷く優しかった。
 お礼を言われるようなことは、してないんだけど。それでもほっこり心が温まったような気分だ。


「ふふ、」


 つい笑みが零れる。

 相変わらず元帥は風景の模写に勤しんでいて、神田は退屈そうに花畑を見ているだけ。
 折角気持ちの良い所に来たんだし、貴重な休みを満喫しようと湖で澄んだ空気を堪能していた。

 眼下に広がるのは、透明な湖とそこに浮かぶ白や桃色の花々。
 緑の匂いに混じる、花の香り。
 森林浴っていうのかな?
 こういう自然に囲まれてのんびりするのも、悪くない。


「いつもより満喫できてるかなぁ」


 いつもは素っ気無い休日を送っていたけど、今日は充実していたかも。
 連れて来てくれた元帥に感謝しなくちゃ。

 目を瞑って空を仰ぎながら澄んだ空気を堪能していると、柔からな草に落ちる足音が届いた。


「あれ」


 目を開けて見れば、少し離れた場所で同じように畔に立つ神田の姿が見えた。
 いつの間にこっちに来たんだろう。


「神田も森林浴?」


 笑って問いかければ、底の見えない黒い眼が向く。


「なにニヤけてんだ」


 かと思えば、鬱陶しそうに返された。

 うん。
 やっぱり何処にいても神田は神田だ。


「だって気持ちよくて。こういう休日、過ごしたことないから」


 そんな神田の物言いも気にならなくて、笑ったまま湖に視線を戻す。


「綺麗な景色だよね。なんだか教団とは別の世界みたい」

「別に普通だろ」


 そうかな。
 少なくとも私は、こんな一面の花畑を過去見たことはないかなぁ。


「普通じゃないよ。任務先でだって、こんな景色見たことないし。引っ越したらもう見られないのが残念…写真でも撮っておこうかなぁ」

「なに女みたいなこと言ってんだよ」

「いや女だから私」


 性別間違えないで下さい。
 私だって花の一つや二つ、偶には愛でたりします。偶には。

/ 2655ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp