第47章 リヴァプールの婦人

「ガァッ」

「ティムも無事だったのか。雪さん、怪我は？」

「大丈夫、私もティムも無傷だよ。それよりユウ、その足と六幻を退いて」

「なんでだよ。こいつらはあの赤毛だろうが」

「え？ち、ちょっと待って二人いるんですが。顔そっくりなんですが…まさか双子！？」



慌ただしくフレッドとジョージの顔を交互に凝視するアレンに、敵意剥き出しに二人を殺気で威圧する神田。
どうやらこの場を治める為には、説明が不可欠のようだと雪は六幻の峰に手を添えた。



「ちゃんと説明するから。とにかく二人はイノセンスとは無関係だし、悪人でもないの。暴力は駄目」

「というかユキも僕に同じようなことしてた気がするけどなぁ…」

「流石チンピラ仲間…」

「あ？」

「いてて！骨！骨折れる！」

「く、首に食い込んでる！刃が刺さる！」

「だから駄目だって！相手は一般人！ノアとAKUMAも関係ないの！」



峰を押さえるだけでは神田の勢いは止まらないらしい。
仕方ないと雪はそのまま添えていた手で刀身を掴んだ。
刃先もまとめて掴めば、イノセンスの発動はしていないものの充分切れ味のある刃が雪の手に食い込む。
そのままでは皮膚を斬り裂き流血し兼ねないと、渋々と神田は柄を握っていた手の力を抜いた。



「手を離せ」

「なら退いて」

「チッ、退きゃいんだろ。ただしちゃんと説明しろ」



フレッドを押さえ付けていた膝を退く神田を確認してから、雪も刀身から手を離す。
鞘に六幻を収める神田の言葉に、食い入るような双子の目が向いたのは雪に対してだった。
説明とはどこまでする気なのだろうかと、案じているのだろう。
他人同盟を組んだ身として、仲間内でも下手なことは言えない。



「僕も気になります」

「こほん。まぁ、そんな込み入った話でもないから」



拳を口元に当てて咳払い一つ。
疑わしそうな目で見てくる神田と、興味を持つ目のアレンを前に、雪は事の経緯を説明すべく口を開いた。