My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「放して…ッいいでしょ少しくらい!サイン強請ったりしないから!ぁ、握手くらいなら許されるかなっ?」
「握手なら僕らがするよ!なぁ兄弟!」
「ああ、サインだってサービスするさ!」
「それは要らない二人のこと知らないし」
「「ワオ」」
どうやら全てに置いて盲目に好きな訳ではないらしい。
温度差のある雪の態度に、仕方がないかと双子も反論はしなかった。
ハリー・ポッターシリーズである魔法界を描いた物語は、史実が元となっているが脚色されている所もある。
物語の登場人物もまた、大概は作者が架空に生み出したもの。
そこにフレッドとジョージの名も存在しないのだ。
「でも僕らも魔法使いの一人だぜ?」
「此処は僕らが作った店なんだ。ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ。悪戯専門店!勿論魔法グッズのね」
「ふーん…つまりはエキストラってこと?」
「…兄弟、どうする。僕ら馬鹿にされてるぞ」
「これは架空の世界じゃないって、気付かせてやればいい」
「いいのか?」
「どうせ最後は忘却術さ。真実を話した方が事も進め易いだろ」
「確かに」
「何、コソコソと。言いたいことがあるなら聞こえるように言って」
顔を寄せ合い言葉を交わす双子に怪訝な顔をすれば、同時に向く緑の目。
にっこりと同時に作る笑顔はなんだか胡散臭い。
思わず一歩後退る雪に、ジョージが手にした杖を持ち上げた。
「"ウィンガーディアム・レヴィオーサ"」
「わ…っ!?」
難しい呪文のような単語を発したかと思えば、杖の先が光り出す。
と、急に雪は足場を失った。
ふわりと浮かぶ体。
しかし重力は感じている。
浮いているのは雪の体ではなく、背負っていた荷物だった。
「な、何…ッ!?」
「言っただろ、魔法だって」
「夢のお話じゃないんだぜ。ましてや俳優でもない」
「下ろしてよ…!」
「ユキが僕らの言葉を信じるなら下ろしてもいい」
「どうだい?」
ふわりふわりと上下に揺れる。
荷物に振り回される雪を見上げる双子の顔は、清々しい程の笑顔だ。
目の前に近付き提案を持ち掛けるフレッドに、困惑気味の雪の瞳が重なる。
「ガァッ!」
二人の視線の交わりを妨げたのは、金色の閃光だった。