My important place【D.Gray-man】
第47章 リヴァプールの婦人
「アレン君と神田っていっつもそうだよね…私の話なんか全然聞いてくれないんだから」
「そ、そんなこと…」
「オイ」
「じゃあなんでまた喧嘩するの?それも任務中なんて。仲間が怪我したらどうするの」
「ぅ…ごめん…」
「ぁ、アレンをあまり責めないで欲しいである、リナリー。私はAKUMAに囲まれた時に、アレンに助けて貰ったんであるよ」
「オイ」
「それとこれとは別!」
「全く煩いですわね。任務は遂行したのですから、今更後から横槍を入れないでくれませんこと?」
「そういうテワクも、クロウリーの手助け貰ってたでしょ」
「な…!」
「あれは偶々であるよアレン」
「オイ」
「偶々でも助けたことには変わりませんよ。同じことです」
「わ、わたくしは助けてくれなんて一言も…!」
「おや。貸しを作ってしまいましたね、テワク」
「トクサまで!煩いですわよ!」
「…うーん…」
やんやと騒ぐ仲間を余所に、雪は捻ったり押したり撫でてみたり、変わらず謎の掌の物と格闘していた。
やがてあれやこれやと検証した結果、端の銀色の装飾を指で弾けば唐突にそれはパチリと開いた。
「あっ」
蓋の中から現れた仕組みを見て、雪はようやくそれがなんなのか理解した。
「わかったライターだ!」
「オイつってんだろ!」
「痛い!?」
しかし、ぴこんと頭上にライトが付くかのように顔を上げれば、同時にべしんと頭上から降ってくる叩きが一つ。
「シカトこいてんなよ、さっきから呼んでんだろうがッ」
「~っ…なんで呼ぶのにいっつも暴力持ち出してくるの!?何、聞いてるよ!またアレンと喧嘩したんだって?本当幼稚園児だよねッ」
「………」
「ぁ…ちょ、待っ…痛い痛い!耳引っ張るのやめ…!」
一人外野にいた雪を暴力にて思考から現実に引き戻したのは、眉間に深い皺を寄せた神田だった。
周りの騒動を気にも止めない程、一体雪は何に夢中になっているのか。
それが行動の最大の理由だったが、どうやら神田の中には穏便に問いかけるという選択肢はなかったようだ。