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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「それより猫ちゃん、あの屋敷で捕まってましたよ。また迷い込まないように気を付けて下さいね。あそこの人達、動物に冷たいから」

「君が彼女を守ってくれたんじゃろう?何かお礼をせねばのう」

「お礼なんていいですよ、勝手にやったことですから。ただの自己満です」



見返りが欲しい訳ではない。
あっさりと首を横に振る雪に老人は目を細めると、柔らかく口角を持ち上げた。



「ふぅむ…何か丁度良い物は…おお、これがあった!お礼に受け取ってくれんか」

「え?」



がさごそとマントの懐を漁っていたかと思えば、老人が取り出したのは小さな筒状の物だった。
片手で握り込める程のサイズ。
両側は銀色の縁が付いた、天鵞絨のマーブル柄が美しい。



「儂のお気に入りなんじゃ」

「そんな、尚更受け取れないですよ」

「いいんじゃよ、儂が勝手にやってるだけの自己満だ」



そう返されてしまえば何も言えなくなる。
仕方なしにと受け取ってはみたものの、その物の形状には見覚えがない。



「あの、これって何かの道具ですか?」



ロケットのようにも見えるが、はっきりとした用途はわからず。
問い掛ける為に顔を上げれば、老人は既に背を向けていた。



「使い方は自然とわかる。いずれ君の役に…名はなんと言ったかな?」

「雪です。月城雪」

「ふむ、雪か。好きな響きだ」

「お爺さんの───」

「雪。暗闇の中にいても、人は幸せを見つけることができるんじゃ。光を灯すことを忘れなければ」

「え?」



振り返り述べた老人の笑顔に、何故だか魅入ってしまう。
言葉を失くした雪にもう一度だけ微笑み返すと、今度こそ彼は背を向けて人混みへと消えていった。



「…ぁ…名前、聞きそびれた…」

「名前など構わないでしょう。それよりあの男を捜しに行きますよ、ぼさっとしないで下さい」



老人を見送る雪に呆れたトクサの声が掛かる。
振り返れば待つ二人の仲間を目に、雪は掌の物をポケットに突っ込むと頷いた。



「わかった、行こう」



イノセンスの収穫はなかったが、奇怪な絵画と怪しげな人物の情報は手に入れた。
今宵はあの赤毛の青年を見つけるのが、何よりもの優先事項だ。









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