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My important place【D.Gray-man】

第47章 リヴァプールの婦人



「どうも、初めまして」

「うわあ。こんな白々しい嘘、中々ないけど」

「嘘なもんか。知り合ってたら忘れないよ、女の子なら尚更ね」

「…うわあ…」

「なんだいその顔」


「…ん?」



尚も戯ける青年に雪が表情筋をヒクつかせれば、其処へ一歩踏み出したのはこの屋敷の主だった。
口髭を撫で付けながら、訝しげに青年をじろじろと見る。



「君、新しく入った使用人か?見ない顔だが…」

「「「………」」」



リッチモンドの言葉は雪達にとって決定打だった。
屋敷の主が知らない使用人などいようか。
となれば答えはただ一つ。



「まさか…それって、」

「ほう。どうやら、」

「不審者決定?」



続くリナリーとトクサと雪の声に、青年は開けていた口を結び閉じた。
じっと四人と一匹に視線で疑われながら、やがて彼が出した答えは。



「えーっと…だって此処、美術館だろ?」



へらりと緩い笑顔で首を傾げる。
胡散臭さ全開の回答だった。



「な訳あるか!他人の家に勝手に踏み込んだ時点で侵入罪!よって確保!」

「えぇ!?ま、待って!本当に美術館だと思ったんだってば!」

「美術館に普通そんな格好で来る!?さっきから白々過ぎるっての!大人しくお縄に頂戴されなさいッ!」

「イタッ!これは勝負服ってやつで…イタタタ!?」



あれよあれよと雪に手首を捻り上げられると、背中で交差された状態で忽ちに拘束されてしまう。



「こんな時に侵入者なんて…!猫だけじゃなく人間までも!全く、うちの警備はどうなっているんだ!」

「ま、まぁまぁ。落ち着いて下さい。侵入者なら雪が捕まえましたから」

「金品でなくても金に代わるものが此処には沢山あるようですね。やはり監視カメラは置いておくのが得策では?」

「ッ…そんな物は置かない!絵を預からないと言うなら、君達も早く出ていってくれ!警備体制を見直さないと…!」



青年の出現により焦りを覚えたのか、血相を変えるリッチモンドには最早リナリーの宥めも効かず、聞く耳はない。
尚も提案してみるものの、これ以上粘るのは無理だと悟ったトクサが雪に向かって首を横に振れば、手早く取り出した縄で青年の手首を縛り上げながら雪も頷いた。

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