第47章 リヴァプールの婦人

「どうしたんだい？ロード」

「ティッキー、なんだか楽しそうだなぁって思ってぇ」



ロードのことなら即座に反応を示すシェリルがすかさず問えば、くすりくすりと愛娘は意味深に笑うだけ。
その意味深そうな言葉にもシェリルやジャスデビが首を傾げる中、千年伯爵は一人静かに紅茶を味わい続けていた。



「ならばロードも一緒に遊んで来たらどうデスカ？」

「ふふ。ボクはパース♪邪魔したくないもん」

「遊ぶ？…ってなんだ？」

「ヒ～…さっぱりわかんない…」



どうやら言葉の真の意味を理解し合えているのは、ロードと伯爵だけらしい。



「なんのことやらさっぱりだけど、確かにさっきのティッキーの笑顔はいつもより柔らかかった気が…はっ！」



ぼんやりと呟きながら自分の言葉に自分で驚きの声を上げたシェリルが、ロードの小さな肩を掴み掛かる。



「もしややっぱりティッキーに意中の相手が…！？」

「はぁ？あいつに女？ナイナイ。どんな美女だってバッサリだろ」

「ケッコンだってしたくないっていっつも言ってるもんね」

「お父様ぁ肩痛～い」

「はっ！ごめんよロード！」



無い無いと首を横に振るジャスデビの言葉は、尤もだと言えるもの。
舞踏会でどれ程の高貴な女性を相手にしようとも軽く受け流すティキは、黒の貴族としての豪華な生活より、白としての浮浪者同然のような生活を好んでいるように見える。



「僕の気の所為か…ビビッときたんだけどなぁ。ビビッと」



ロード相手に発揮する父アンテナならぬ、義弟へ向けられた兄アンテナを立てながらシェリルは深々と溜息をついた。



「クスクス」



しかしロードだけは、未だ口元に弧を描いたまま。
裂いた口端に歪んだ笑みを乗せた。










（早く捕まえてきてねぇ、ティッキー）