My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「カッケー!まさか狼になるなんて!すげーよ!すげー恰好良い!」
勢いで抱き付いたまま、小さな体は大きな狼の背に跨る。
狼程の体格であれば、ティモシーくらいなら乗せても平気なのか。
雪は嫌がる素振りを見せはしなかったが、耳と尾はヘタらせたままだった。
「なぁなぁ!このままオレとハロウィン参加しよーよ!ねーちゃんと一緒に回りたい!」
「こらっティモシー!雪さんは都合の良い玩具じゃないんだ、無茶言うなっ」
「んだよ、玩具だなんて思ってねーよ!恰好良いなって褒めてるだけだろーッ」
「貴方はそう思っていても、彼女はそれどころではないでしょう。とりあえず背から下りてあげなさい」
「あんだよ、ホクロのあんちゃんまで…っ」
アレンとリンクに責められ、ぐぅっとティモシーが悔しそうに押し黙る。
しかしそうして騒ぎ立てば、充分に周りの目を引き付けたらしい。
「まぁ!雪ちゃんったら、わんちゃんになっちゃったの…!?」
「これはまた…凄いな。色んな意味で」
「なんとも面妖である…」
「わぁ…!撫でてもいいかな…っ」
他エクソシストの面々にも囲われ、雪は堪らず尾を腹の下に丸め込んだ。
犬より遥かに大きな体はしているが、それでも獣。
ぐっと下がった視線に、覆い被さるように覗き込んでくる人の姿は大きく映る。
「ふわふわ!可愛いなぁ」
「わ、私も触ってもいいかしら?リナリーちゃん…っ」
「私達の言葉はわかるのか?雪」
「言葉は話せないらしいあるな…」
どうやら女性陣には甚く気に入られたらしい。
分厚い毛に覆われているものの、頭や首筋を撫でてくる手はなんとなくこそばゆい。
こそばゆいが、相手はリナリーとミランダ。
嫌がる素振りは見せられないと、雪は耐えつつぐっと腰を下げた。
あちこちから向けられる興味や好奇の目。
それは決して居心地が良いものではない。
(愛玩動物の気持ちが、なんとなくわかったかも…)
ひたすらに人に愛でられる獣は、もしかしてこんな気持ちなのだろうか。
全てがそうではないだろうが、雪にとっては良い気分ではなかった。