My important place【D.Gray-man】
第45章 10/31Halloween(番外編)
「……アレン」
「……はい」
「私の目の錯覚かな…ラビの、顔、が…」
「いえ。僕も同じものを見ています。恐らく」
「なんさ二人共…ま、まさかオレにも一つ目が生えてるとか…!?」
鏡で見なければわからない変貌なのかもしれない。
慌ててぺたぺたと額を触るラビに対し、雪とアレンは凝視したまま静かに首を横に振った。
「額じゃない、ラビ」
「額というか…顔全体に異変があると言いますか…」
「は?なんなんさっ」
「や、うん。あのね…その…か、」
「か?」
「南瓜」
「………かぼちゃ?」
「に、なってる」
「…は?」
「南瓜に、なってる」
「………」
「顔が」
ぺたりと、ラビが触れた己の顔。
柔らかい肌の質感はない。
ぺたぺたと触れる頬は固く、叩けばこつこつと小気味良い音がする。
「………」
間。
「はぁあああ!?!?!!」
「ジャック・オ・ランタンですね」
「わぁ一番ハロウィンぽいのきた!」
「顔だけ南瓜って…シュールですねラビ…」
普段のラビの毛色と同じ、オレンジ色の南瓜頭を抱えて悲鳴を上げる。
体はいつもの彼なのだが、顔だけ目と口をくり抜いた、かの有名なジャック・オ・ランタンへと変わっていた。
いつの間に。
そして中身はどういう構造になっているのか。
コムイの薬の威力には底がない。
「なんでオレだけそんな間抜けなキャラ!?何そのチョイス!悪意を感じる!」
「仕方ねーよ、兎のあんちゃん。クッキーの効力はランダムだから」
「だからって!なんで!南瓜!生き物ですらない!野菜!」
「ジャック・オ・ランタンは列記とした灯具の一つですよ。鬼火とも呼ばれ───」
「んな律儀な説明要らねー!見た目の問題!」
大きな南瓜頭を床に擦り付けて咽び泣く。
それさえも間抜けに見える構図のラビに、容赦なく淡々ととどめを刺すのは常に冷静なリンク。
口を挟む隙がなく、雪とアレンは押し黙った。
流石にこればかりは、上手いフォローなんて思い付かない。