My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「一通りのことは元帥と話が通ってる。だから君のことを処罰はしないよ」
「そうか…手間掛けたな」
「本当にねっ君達は師も弟子も好き勝手過ぎるよ。振り回される僕の身にもなって欲しいな!」
「わ、悪かったよ」
にっこり笑って歪に口元を歪ませ、バン!と机を叩く。
流石の神田もそんなコムイの剣幕に、少しばかり圧されてしまった。
やはり雪の一件は大きな問題であったらしい。
「…けど譲れねぇんだ」
だからこそ譲れない。
反論する気はないのだろうが、譲歩する気もないらしい。
静かに謝罪してくる珍しい姿の神田をそれ以上責める気にはなれず、コムイは深く椅子に座り直した。
「とりあえず、雪くんとは後で直接僕も会って話すから。彼女を手荒に扱わないようにするから、そこは安心して」
「…コムイ」
「なんだい?」
「雪がノアだってことは確定してんだろ。…今後のあいつの教団での扱いは、どうなるんだ」
「…そうだね。まだ今此処で答えは出せないけれど…僕の希望としては、彼女の命を守りたい。でもノアを教団(ここ)に置くことに、納得しない者もいるだろう。下手すれば仲間内での反乱だってあり得る。それは避けたいことだ」
神田の不意な質問に、コムイの顔が真剣なものへと切り替わる。
黒の教団の室長としてのコムイが、其処にいた。
「となると彼女を生かす手立ては大凡二つ。今のまま、鎖に繋いで檻に閉じ込める。又は、教団から追放する形で隔離しての監視」
二本の指を立てて、淡々と試案を挙げる。
腕を組み耳を傾ける神田は、口は挟まないものの渋い顔をしていた。
どちらの案も、決して良いものとは思えない。
そんな神田の無言の意思は伝わったらしく、コムイは苦笑混じりに首を横に振った。
「前者は神田くんが納得しなさそうだし、僕もできればしたくない。後者だと雪くんがノア側の手に渡る危険性が高まり、色々と他のリスクも考えられる。あまり得策じゃないね。……そこで、三つめだ」
更に一つ、そこでコムイは指を立てた。