My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「吐き出せ、全部」
「んぐっ…ちょ、待っ」
「いいから出せってんだよ。お前今満足に飯も食えねぇ体だろっ」
咄嗟に雪の口ん中に指を突っ込む。
飲ませたくてあんなことやったんじゃない。
雪への征服欲に、理性が追いつかなかっただけだ。
こいつに酷いことをしたい訳じゃない。
慌てて咥内のものを、前のように吐き出させようと指で掻き出したら、出てきたのは透明な粘液……透明?
「おま……」
おい。
「飲んだのか。今の」
「う、ん…」
「全部?」
「…吐かない、程度に、は」
「何やってんだお前…っ」
無理に咥内射精したのは俺だ。
そこは何もかも俺が悪いと思ってる。
だが全部飲む必要なんてねぇだろッ
「だってユウが無理矢理───…」
「?」
「ぅ…」
「どうした」
俺がそう抗議する前に、反論しようとした雪の声が急に止まる。
両手で自分の口元を押さえ付けて、顔色はなんだか悪い。
…お、おい……まさか…
「…………吐きそう」
「なッ」
まじかよ。
「ま、待て。吐くなよ。なんか器持ってくるから待ってろ!」
まさかと思った予感が的中して、慌ててベッドから下りる。
全部二の次だ。
とにかく雪が吐き出す前に、なんか容器持ってこねぇと。
それだけ言い聞かせて慌てて机の食器に手を伸ばせば、雪は大人しく両手で口元を押さえたままコクコクと顔だけ上下に振っていた。
…結構な勢いで。
本気でまずいか、これは。