My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「ちゃんと言えたな」
その口から、俺の言い付け通りの言葉を吐いて。
「よくできました」
「はぁ…っ……ん…」
溢れ出た蜜で濡れた口元を拭いながら、指を抜いて達した雪へと顔を寄せる。
浅く息をついている唇を優しく塞ぐ。
「気持ちよかっただろ」
呼吸の邪魔にならないように、ほんの一瞬だけ。
それから優しく尖りのない声で、先へ導いてやる。
雪の意地張りは、無理強いさせるより優しさで促してやった方が崩れ易い。
「……うん」
…ほらな。
額を重ねて、何度も軽いキスを散りばめる。
「…ユウ」
「?」
「服…」
先に進む前に素直な雪を堪能していたら、その雪自身に行為を止められた。
止めた雪がちょんと指先で摘んで引っ張ってきたのは、俺の服の袖。
「私も…ユウの体、ちゃんと見たい」
じっと暗い二つの目で見上げて乞う。
漆黒なのに、ゆらゆらと奥で何かが揺らめいて見える不思議な色。
無意識なのかわかんねぇが、雪が甘えた時に見せる顔だ。
その眼に見つめられると目が逸らせなくなる。
到底抗えそうにないから、聞き入れるしか選択肢はない。
……別に断る理由もねぇし。
雪の要望通り、体を起こして身に付けていた衣服を脱ぎ捨てた。
雪だけじゃない。
俺だってこんなにはっきりと光が灯ってる中で、全身を晒け出すのは初めてだ。
「ユウ…さ、寒くない?」
「んだよ。脱げって言ったのは自分だろ」
最後にズボンと下着を脱ぎ去れば、窮屈に押し込められていた俺の半身が顔を出す。
既にいきり勃って主張しているそれを目にした途端、雪は慌てて顔を逸らした。
…なんだその取って付けたような会話の切り口。
わかり易い照れ方だな。
「別に寒くなんてない」
第二使徒の体だってこともあるが、それ以上に。
「雪がいるなら」
心の充実さの方がでかいんだろうな。