My important place【D.Gray-man】
第44章 水魚の詩(うた)
「───は…ん、」
いつもの薄暗い空間じゃない。
俺の影が被さっても尚、しっかりと目に映る雪の体。
キスを一つ増やす度に、しっとりと吸い付いていく。
指先で撫でて擦り上げる度に、赤らんでいく。
目に見えて感じている様が伝わると、視線がその肌に釘付けになって離れない。
微弱な愛撫にも、抜けるような吐息を零す雪にそそられた。
つい夢中になっていた所為か、気付かなかった。
「…ュ、ゥ…」
甘い声が俺を呼ぶ。
脇の薄い皮膚に散りばめていたキスを止めて顔を上げれば、潤んで艶めく黒い眼。
じっとこっちを見ているだけだったが、それだけで充分だった。
濡れた目が誘うように揺らめく。
俺を欲してるのが、充分過ぎる程に伝わった。
愛撫で焦らし過ぎたか。
「目は口ほどにものを言うってのは、本当だな」
自然と口角が上がる。
「欲しいもんがあるなら言え。そしたらちゃんとやる」
「っ…意地悪…」
「なんでだよ」
別に苛めようと思って言ってる訳じゃねぇよ。
「雪が欲しいもんを、その声で聞きたいだけだ」
…加虐心みたいなもんは、偶にあるけどな。
でも今は正直な瞳と同じに、その口にも正直になって欲しかっただけだ。
いつもは任務中にあーだこーだ文句付けてくる癖に、こういう時は口数少なくなるよな、お前。
日常の機能をすっかり放棄してる雪の唇を、優しく指先でなぞる。
誘うように呼び掛けながら柔らかい感触を堪能していれば、ゆっくりと雪の唇が開いた。
「…っと…」
「…聞こえねぇ」
「もっと、ちゃんと…触って」
「どこを?」
「…まだ、触ってない、とこ」
「どこだよ」
「っ~…」
そんなんじゃ絆されねぇからな。
物欲しそうな顔してんのに。
して欲しいことがあるならちゃんと言え。