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My important place【D.Gray-man】

第44章 水魚の詩(うた)



「跡、残ってたのか」

「ッ…!」



哀しげに纏う雰囲気で察した。
恐らくその胸には、雪の言っていた火傷のような跡が残されていたんだろう。
その跡を確認しようと、後ろから雪の肩越しに覗き込む。
と、それを阻止するかのように、ぐぐっと雪の体が前のめりに倒れた。



「や、放して…っ」

「隠すなよ。その体のこと、全部話せって言っただろ」

「そうだけど…っやだよ、見られたくないっ」

「なんでだよ。恥ずかしいって意見なら却下だからな」



体を屈めて胸元を隠そうとする雪を止める為に、掴んだ細い両腕へと力を込めた。
痛みを与えないよう注意しながら、でも逃れられない強さで。



「み…みっともない、でしょ」

「別に」



前も同じようなことを言われたことがある。
額の傷なんてみっともないから見られたくないと、額の包帯を庇って、俺に見られることを恐怖して拒絶した雪。
あの時は顔の傷を見られるのが純粋に嫌なんだろうと、そう思っていた。
雪も女だからそういう思いでもあるのかと、ただそう思っていたが…そうじゃなかった。

心底怯える目で恐怖していたのは、俺にノアの聖痕を見つけられるのを恐れたからだ。

それを俺は知っている。
もう知ってしまったことだ。
だから逃がす気はねぇよ。



「モヤシのイノセンスに傷付けられたってのは気に喰わねぇが、それもAKUMAとの戦闘で負った傷みたいなもんだろ。任務遂行しようとして負った傷だろうが。どこがみっともないんだよ」



包帯の下を頑なに隠していたあの時と、同じ言葉を雪に投げかける。
その思いは一緒だ、以前となにも変わらない。
任務遂行の為に負った怪我を、みっともないなんて思うかよ。

ただ以前と違うのは、そこに追加された俺の強い思い。
もう"あの時気付いていれば"なんて後悔はしたくない。
だから悪いな、諦めろ。



「だから隠すな。ちゃんと見せろ」



今日はとことん逃がす気なんてねぇからな。

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