My important place【D.Gray-man】
第13章 夢現Ⅰ
「神田、手が…!」
「このくらい平気だ」
アレンのイノセンスを直接掴んで止めたものだから、容赦なく亀裂が入った手からぼたぼたと血を垂らす。
けれどバク支部長の声に振り返ることもなく、至近距離でアレンを睨んだままの神田は冷静だった。
「それよりそいつをさっさと退かせろ」
「蝋花さん、こっち…!」
「は、はい…っ」
慌てて蝋花さんに駆け寄って声をかける。
どうやら今のアレンの行動で我に返ったらしく、大人しく離れてくれた。
よかった。
「グル…ル…」
前髪で隠れて見えないアレンの顔。
だけどその口から僅かに上がったのは、他のゾンビと変わらない呻り声だった。
…ああ、やっぱり。
「いかん…! いくらその体でもイノセンスに生身では勝ち目はない! 退け、神田!」
「うるせぇな。んなこと言われなくても、わかってる」
声を荒げる支部長に鬱陶しそうに視線だけ向けて、神田はもう一度アレンを睨み付けた。
「とりあえず一発だけ殴らせろ。丁度良い憂さ晴らしだ」
ギロリとアレンを見るその目は、獲物を狩る獣の目そのもの。
ってこんな時まで仲悪くしないでくれるかな!?
「今はそんなこと──つぅッ」
呆れ半分、咎める気持ち半分で声を出せば、腕に鋭い痛みが走った。
「なん…っ…ティム?」
自分の腕を凝視して見たのは、あのティムキャンピー。
「え、何」
いつもの可愛らしいフォルムで、ギザギザの歯が並んだ口を開けて。
「え、ちょっと待って」
思いっきり、私の腕に噛み付いてる。
「え、いやまさか」
ひやりと冷たい汗が肌を伝う。
…嫌な予感。
「ガァアア…!」
鳴く姿はいつもと変わらないのに、何故かいつもよりその声が低く呻くように聞こえる。
まさか。
ま さ か。