My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「はぁ…とにかく合図を送ったら頼むぞ」
「はぁっくしょいッ!」
「おいっ気を付けろよジジ!」
「う~寒ィ! 早く終わらせようぜ…!」
溜息混じりに無線機へと呟くリーバーは、大きなくしゃみをするジジに慌てた。
間違えてロープから手を離そうものなら、三階建ての建物から真っ逆さまだ。
「…ったく!」
そんな屋上での彼らのやり取りを、孤児院の玄関前から見上げる鋭い目が二つ。
「何が"結界だー"だ、オカルト集団共めッ」
苛々と煙草を口にしながら悪態付くのは、ずっと彼らに付き添い、無駄な時間を過ごしていると苛立つガルマーだった。
「大体、こんなドアがなんで開けられねぇんだよ。可笑しいだろ」
煙草の端を噛み潰しながら、目の前の階段を上がる。
そうして目の前に佇む馴染みのドアを不思議そうに一目見て、ガルマーはドアノブに手を伸ばした。
「よし今だ!」
「ほっ」
その時だった。
タイミング良くリーバーの合図が出されたのは。
同時にジジが小さなピンセットで、潰さない力加減で挟み込んだコシカルを煉瓦の壁から引き剥がす。
瞬間。
「うげっ!?」
「ぐっ!?」
「わぁ!?」
「ぎゃっ!」
「きゃあんッ!」
ビリッ!と孤児院の建物に触れていたジジやリーバー、ファインダー部隊を襲う電流のような衝撃。
それは一瞬だけで、その一瞬のうちに孤児院はその姿をガラリと変えた。
一気に消え去る壁や床。
あちこち崩壊した孤児院の残骸にジジがしがみ付く。
「あっっぶねぇ…! なんだこれ! 突然穴なんか開きやがって…!」
「結界が解けたんだろう…! それより媒体は? 無事かっ?」
「ああ、バッチリ! ラボでがっつり調べてやるぜ」
ピンセットで取り上げたコシカルは押し潰されず健在なまま。それを掲げて意気揚々とジジは笑った。