My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
鴉の札を至る所に貼り付けられ、縛られ気を失っている。
そんな雪を抱き上げ腰を上げるアレンの下へ、神田は足を向けた。
力なくアレンの肩に凭れた、生気のない顔。
傍で見れば、もう雪は褐色の肌も額の聖痕も浮き上がらせてはいなかった。
いつもの雪と変わらない姿。
あのノアのような姿は夢だったのではないかと思える程。
しかし確かに目に焼き付いている。
ノア化した姿も、雪が放った謎のエネルギーも、自分を見てくしゃりと泣きそうに歪めた顔も。
「…ッ」
眉間に力が入る。
ギリ、と奥歯を噛み締めた。
知っていたからだ。
それは神田には見覚えのあるものだった。
雪が体に纏っていた高圧エネルギー。
まるで雪を守るかのように、AKUMAや鴉の攻撃を弾き返していた眩い電流のようなもの。
以前神田が破壊し絶命させたノア、スキン・ボリックという男。
その男が放っていた技に酷くそれは似ていた。
そして思い当たる節。
雪とマチュピチュ遺跡でAKUMAとの攻防の際に、突如現れていた謎の電撃。
あれもそうだったのか。
なのに知らぬフリをして欺いていたのか。
言葉にならない。
様々な感情が神田の心を埋め尽くす。
〝ノア〟
〝敵〟
〝欺き〟
周りの反応からして、雪の事情を知っている者はこの場に一人もいなかった。
ノアとしての姿を隠し、教団に身を置くこと。
それがどういう意味を成すのか、雪も充分過ぎる程理解しているはず。
〝裏切り〟
自分と過ごしてきた日々も、見せるようになった素の顔も、拙くとも伝えてくれた言葉も、全て偽物だったのか。