My important place【D.Gray-man】
第42章 因果律
「ぴえぇえええ!!」
『…モシ…』
「ぴぇええええん!!!」
『ティモ…シ…』
「ぴええええ!!!!」
『泣くな…ティモシ…僕の声、聞こえるか…?』
…あれ…なんだ…白髪のあんちゃんの声がする。
そういえばさっきも、その声で起きたんだっけ。
…でもどこから?
『大丈夫、だ…すぐ助けに行く…』
「!…ぐすっ…黒…尽くめ…?」
その声はすぐ傍から聞こえた。
思わず涙声が止まる。
見れば、こっそりともこもこしたAKUMAの体をよじ登ってきていたティムキャンピーの口元。
ギザギザの歯に咥えられたペンから、その声は聞こえていた。
なんだこれ…ただのペンじゃないのか?
無線機能でも付いてんのかな。
『絶対…助ける、からな…っ』
向こう側から聞こえる白髪のあんちゃんの声は、いつもの丁寧な言葉遣いじゃなかった。
途切れ途切れの言葉も、なんだか息を荒く吐き出しているように聞こえる。
…あのレベル4ってAKUMAと戦ってるから?
それでも必死に搾り出してくる言葉は、オレを助けようとするもの。
……だけど。
「助ける…? ぐすっ…お前らだって…オレをどっかに連れてくつもりじゃんかよぉ…えぐ…そんなの、助けるじゃねぇ…助けるじゃねぇよう…」
涙混じりに零れる言葉。
それはオレの本音だった。
こいつらだって同じだ。
丁寧に扱ってたって、結局はオレの居場所を取り上げようとしている。
「もぉ滅茶苦茶だ…何もかも…」
院長先生やチビ達は、訳のわからない人形にされてしまった。
"生きてる"なんて一つ目お化けは言ってたけど、あれじゃあ死んでるのと同じだ。
「ぐすっ…滅茶苦茶だよバカぁああッ」
パメラも死んだ。
エミリアだって撃たれたんだ。
もしかしたらこの爆風に巻き込まれたかもしれない。
ここがどこかもわからない真っ暗な世界に取り込まれて、あちこち壊されてしまったハースト孤児院。
「オレは…ただ…ッここにいたかっただけなのに…!」
ただそれだけだったのに。
オレの世界は壊されてしまった。