第41章 枷

　──全ての始まりは約百年前
　ひとつの"石箱(キューブ)"が発見されてから始まった



　　後生いの者達へ

　　我々は闇に勝利し　そして滅びゆく者である

　　行く末に起こるであろう禍(わざわい)から

　　汝らを救済するため

　　今此処に言の葉を残す



　其処に入っていたのは　古代文明からの
　ひとつの予言　と　ある物質の使用方法

　其の物質こそが"イノセンス"と後に我々が呼ぶ事になる　不可思議な力を宿した異物
　"対AKUMA武器"とは　イノセンスを加工し武器化した物の呼称の事である

　"石箱"の作り手は其のイノセンスをもって
　魔と共に訪れた世界の終焉者　千年伯爵と戦い打ち勝った者だと謂う

　だが一度　この聖戦で世界は滅ぶ事になる
　其れこそが約七千年前に起こった悲劇
　旧約聖書に記された"ノアの大洪水"

　"石箱"は其れを"暗黒の三日間"と記した

　そして再び現世に現れた千年伯爵の存在と共に
　"暗黒の三日間"の再来は現実味を帯びる事となる

　ヴァチカンはこの事実により
　"石箱"の予言に従う事にした
　其れこそが
　イノセンスの復活　と　黒の教団の設立



　　使徒を集めよ

　　イノセンスはひとつにつき

　　ひとりの使徒を選ぶ

　　其れ即ち"適合者"

　　"適合者"なくば

　　イノセンスは其の力を発動しない



　其の適合者こそが"エクソシスト"
　神の使徒と呼ばれる者達

　千年伯爵もまた　過去を忘れてなどいなかった

　〝人魂〟〝機械〟〝悲劇〟

　其れらの材料を元に伯爵が創り出す悪性兵器"AKUMA"

　AKUMAはイノセンスが白であるならば
　黒の存在である暗黒物質"ダークマター"によって造られている

　進化すればする程　其の物質は成長し強化されていく
　伯爵の目的はAKUMAをもってイノセンスを破壊し復活を防ぐ事

　其の探し巡られるイノセンス達は
　ノアの大洪水により世界中に飛散していた

　黒の教団は世界各国に眠っているイノセンスを見つけ出し千年伯爵を倒せるだけの戦力を集めなければならない
　伯爵もまたイノセンスを探し　破壊すべく動いている

　これ即ち　黒の教団と千年伯爵との
　イノセンスの──〝争奪戦争〟と相成った