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My important place【D.Gray-man】

第41章 枷



 なんだか自分の心を見透かされた気がして黙り込んでしまえば、不二子ちゃんは口元を優しく緩めた。


「好きな人を褒められるのは嬉しいものよね。その気持ち、わかるわ」

「へぇ~、それってオレ様のこと? ふーじっこちゃん♡」

「さぁ、どうかしらね」

「あてッ」


 後ろから肩に顎を乗せて問いかけてくる、調子の軽い大泥棒。
 そんな彼をあしらうように額をペしりと叩くと、その黒い革手袋をした手を差し出した。


「それより、例のものはちゃんと盗めたの?」


 そう催促する不二子ちゃんの言葉に引っ掛かる。

 "盗む"?

 …そう言えば今夜は怪盗Gが再び国宝リージェントを盗みに現れる日だった。
 もしかしてそこでまた、ルパンは何かしでかしたのか。


「ああ、勿論」


 そう言ってルパンが懐から取り出したのは──…あ!


「国宝リージェント…!?」


 目を疑った。
 ルパンが懐から取り出した物。
 あの煌びやかな大きな王冠は、間違いなくルーブル美術館に展示されていた国宝だ。

 というかあんな大きな王冠、どうやって懐にしまってたの。
 まるで手品だ。


「また怪盗Gから横取りしたの…!?」

「まさか。これはただのハリボテさ」

「ハリボテ…?」

「偽物ってこと」


 王冠の縁を指先一本で斜めに支えて、くるくると器用に回すルパン。

 どういうこと?
 偽物の王冠を抱えて"盗みをした"だなんて…。


「本物を一時的に預かる為にな。目くらましの代用が必要だったのよ」

「…?」


 本物を預かる?
 どういう意味なのかわからず、ルパンと偽物だと言う国宝を凝視して咄嗟に頭を働かせた。

 そういえば銭形警部は、ルパンから国宝を取り返したと言っていた。
 あの時微かに感じた違和感。
 人手のない裏手の公園に落下したのに、そこからルパン程の泥棒が逃げ出せないはずがない。
 なのに何故、彼は警察に国宝をみすみす返したのか。


「……まさか」


 ………"わざと"?

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