第1章 第一章
襖を開けると、室内に入れば蛍丸のよい香りがした。もちろん当の本人もそこにいるのであるが、一期は彼の匂いでさえ愛しく思ってしまっていた。
「あ、一期さん。今日はよろしくお願いします。」
「はい、この一期一振。精一杯案内させていただきます」
それでは行きましょう。そう行って二人で部屋を出ると、一期は気配を感じとった。この霊力からして、あの人とあの人だろう。
一期は舌打ちしたい気持ちを抑えて、蛍丸に笑顔を向けると「それでは行きましょう」ともう一度同じことを呟いた。それと同時に彼は背中で隠れている二人に「絶対邪魔をしないでくださいね」と念を送った。
十秒ほどそれをすると、最後に隠れているであろう所を一瞥して、前日から考えていたプラン通りに、厨房に蛍丸を連れていった。