第9章 罪人
「おい、おい、貴族様ってのは他の隊の隊士を指名できるほど偉いのか?誰が届けたっていいだろうが。」
先に口を開いたのは更木だった。
明らかにイライラしている。
「そうやね。優姫ちゃんは他の仕事で忙しいんと違うかな?そんなん指名できんのやったら、うちの備品も優姫ちゃんに頼もかな。」
市丸はいつもの食えない笑顔だが、目がいつになくマジだ……
それと……黙って成り行きを笑顔で見つめる藍染からも普段からは想像もつかない殺気がでてないか?
なんだよ、これ。
京楽は隣にいる狛村にそっと尋ねる。
「四番隊の瑞原って?」
「最近噂の四番隊の聖母の事だ。」
「聖母?」
「この前うちの隊にも健康確認にきた。美しい娘だ。容姿もさながら純粋な心根の。隊士の間でも想いを寄せる者も多いな。」
そう言う狛村も美しいだの純粋な心根だのと絶賛ではないか?
確かに噂は京楽の耳にも届いていた。
美しい女性で、治癒の力は卯ノ花に次ぐ程で、丁寧な仕事ぶり、なかなか打ち解けてくれないがたまに見せる微笑みが堪らないのだと部下の男性隊士が話していたな。
うちの隊にはまだ健康確認に来ていないから実物を見たことはないが……
京楽はワクワク……いや、ハラハラしながら目の前の修羅場を見守る。