第16章 審神者の帰還
僕は、その音色のほうに向かっていくと、ウリエルさんがハープを弾いてた。
遠くでは、新人天使が空を飛ぶ練習をしてる。
「ウ、ウ、ウリエル様っ、た、た、大変です!!」
僕は、最大限の演技をして、ウリエルさんの前に降り立った。
「どうしたの……!?」
演技だとは知らずに、ウリエルさんは、心配そうな顔をしてくれる。
まぁ、本当に大変なことだよ。
「ルシファーが、ルシファーが……!!」
「――!! 彼の身に、何か起きたの!?」
「――いえ、ルシファーが吸血鬼を捉えて奴隷にしてるんです!」
「まぁ、どうしましょう!? それは、確かな情報なの!?」
「は、はい……。どうやら、プレイヤー側の吸血鬼にも手を出してるそうで……。天使など、天珠の宝玉を持ってる悪魔側からしたら、劣るに足りぬ存在だと思われてるんです……っ!!」
僕は、うっうっと泣き真似をしながら説明する。
まぁ、普通はこんなに丁寧な説明ができる時点で冷静だってわかるけどねー。
でも、ウリエルさん優しい。
完全にノってくれてる。
「そ、それは本当なの!? 愛しい彼の宝玉を、ルシファーが持ってるって……」
あー、ルシファー、完全敗北だよ。
「はい……。天珠の宝玉を部屋に飾りの一部に使ってるそうで……」
「まぁ、なんて無礼な……!!」
ウリエルさんは、「許せない!!」といった表情で、指を噛みしめる。
「すぐ、全能神様に報告するわ!! 皆の者、兵の準備をー!!」
「――あ、ウリエル様。お待ち下さい。現在、悪魔族はお祭り中です。その祭りに乗じて、仲間が天珠の宝玉を持ち出すので、祭り客のふりをして、チュートリアル入り口付近までお越しください」
「――私のために、ありがとう。すぐ支度をするわね」
「くれぐれも、『祭り客である』ということを忘れないように。後、ウリエル様は危ないので、できるだけルシファーから離れた位置をキープしてください」
そうそう、ウリエルさんを拉致誘拐なんてされたら、ミカエルに怒られちゃうしね。