第4章 "雪螢"
.。o○物語
ほどなくして、二人は三日に一回の割合で会うようになりました。
若者は相手が雪女だと知っていても、恐ろしい気持ちは沸かないばかりか、恋する思いが募っていくばかりです。
なぁ、君の名前を教えてくれないか?
ある日のことです。
なんとなく聞きそびれていたことを、男は質問しました。
女は目を見開き、驚いたあと、悲しそうに首を横にふりました。
……ごめん。
若者は不味いことを聞いてしまったか、そんな不安にかられ、謝りました。
すると、雪女は違う、と言うと、
……私、名前がないの。
目を伏せながら答えたのです。
名前がない。
その事実は若者と雪女の差を初めて現した瞬間でした。
では、俺が名付けてもいいか?
しかし、若者はそんなことを気にしませんでした。
ならば自分が名付け親に、そんな風に考えたのです。
そうだなぁ……。
若者は雪女をゆっくり見ました。
雪のように白く、儚いですが、さすがに"雪"と名付けるわけにはいきません。
男は儚くて、逆に雪女が見たことないものを名付けたらどうだろうと、思案しました。
________"螢"はどうだ?
ほたる?それはなに?
夏に現れる光る虫の事だよ。儚くて、けれど光ったときは美しい。けれど自然が綺麗ではないと現れないし、そんなに長くは生きられない。
……雪と似ていますね。
雪も直ぐに溶けてしまいますから。
柔らかく雪女は微笑みました。
心の底から嬉しく思ったからです。
ありがとう、-----さん。
どういたしまして。これからもよろしく、螢さん。