第48章 オンリーワン
「ねぇ、結~」
ソファの背凭れにアゴを乗せて、飼い主が遊んでくれるのを今か今かと待ち構える一匹の大型犬。
手入れの行き届いた毛並みが、今日もキラキラと輝きを放つ。
「片付けなんていいからさ、早くこっちおいでよ」
日曜練の後、苦労して家まで引っ張ってきた恋人と、一秒でも早く、一秒でも長く戯れたい。
(今日はこのまま泊まってけばいいのに)
ピンクのエプロンをつけて、母親と一緒に夕食の後片付けを手伝う愛しい背中に向かって、無駄なことだと知りながら、甘えるようにクゥ〜ンとひと鳴き。
控えめなフリルと、腰で結ばれたリボンに、オトコの夢という名の妄想は膨らむばかりだ。
「結ってば、聞いてる~?」
「待て、ですよ」
「……はいっス」
素っ気ない返事すら愛おしい。
恋の病は確実に進行中……いや、もう末期だ。
ツレない彼女の隣で、小刻みに肩を揺らす母親から視線を逸らせると、黄瀬はクッションを抱えてソファに寝転んだ。