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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった



(そう言えば二人共、本来面倒見良い人達だったっけ…)



入院中もそうだったが、退院後もこうして気に掛けてくれる様は変わらず、純粋に感謝を抱く。
改めて考えると、型は違えどラビもリーバーも広い視野を持ち、周りに気配りのできる器用さがある。



(でもここまで世話掛けるなんて、あり難いというか申し訳ないと言うか…)



そこまで気遣って貰える要素などありはしないのに。
そう考えた時に、ふと南の中で生まれた結論。
それは自分には似合わない気もしたが、それでも確かな事実。
自覚すれば、自然と顔が熱を持つのを感じ取った。



(そう、だった)



ただ面倒見が良いからだけではない。
二人がしかと言葉にして南に伝えてきてくれた、抱えた己の想い。

友や仲間としての好意だけではない。
異性としての好意を持ち、求めてくれた心がある。
それを改めて自覚すれば、顔の熱はどんどん増して簡単には抑えられなくなってしまった。

元来、モテる要素など持たないはず。
容姿は並み、スタイルも並み、特に秀でた能力もなく、職場では女性らしい姿もとんと見せていない。
なのに何故、二人はそんな自分に好意を寄せてくれたのか。



(…人生ってよくわかんない…)



人の心など、どう転ぶかわからないあやふやなもの。
しかしこればかりは答えの見つけようがなくて、時々現実離れしているようにも思えてしまう。

だからこそ、顔の熱は簡単には拭えないのだ。



「それより早く薬飲めよ」

「そーさ」

「…うん…ありがとうございます」



そんな顔の熱を隠すように、俯き加減に礼を伝えながら、南は急いで薬を口に含むとペットボトルのミネラルウォーターを仰った。

願わくばこの熱が、喉を伝う水流で少しは冷えてくれるようにと。

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