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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



最初は沈黙だった。



「…っ」



次に口を噤んだまま、声無き反応を見せる。
ふわ、と言葉を失ったままの南の頬に浮かんだのは、化粧のそれではない紅色。
無言の南のその反応を前に、リーバーは微かに口角を緩めた。
そんな反応をされては、無闇に期待してしまう。



「ぁ…え、…え、と…」



やっと口を開いたかと思えば、まごつく様子で単語は言葉を形成し切れていない。



「前…って、その…」

「…いつから、ってことか?」



ゆっくりとリーバーが尋ねれば、こくこくと無言で頷き返される。
子供のような挙動不審な態度。
そんな南の姿さえ可愛いものだと思えてしまうのは、惚れた弱みか。



「そうだな…あれは……南が仕事の残業の夜中に、ラビの部屋に通信ゴーレムのデータを回収しに行った日だな」

「ラビの、部屋…?」



リーバーの細かな説明に思考を巡らす。
ラビの部屋に踏み込んだのは、数える程度。
更に夜中に通信ゴーレムのデータ回収となれば、思い当たる日は一つしかない。



(あ、あの夜…?)



思い出したのは、ラビに無理に体を組み敷かれ唇を奪われた時のこと。
カァ、と南の頬が更に赤く色付いた。



「南」



つい目線が下がる。
ドキドキと脈打つ心臓をどうにか落ち着けようとしていると、握られたままの手をリーバーに軽く引かれた。
反射的に上がった視線は、薄いグレーの色素の瞳と重なった。



「その態度からすると、俺の想いは認めてくれるんだな?」

「え…あ…」



想いを認める、ということは、受け入れる、ということだろうか。
そう回らない頭で考え込めば、咄嗟に頷けはしなかった。

頭に浮かんだのは、デンケ村の地下洞窟で見たラビの消え入りそうな力のない笑顔。






"でも、もう…色々と遅いけど"






そう、力なく諦めた言葉を口にした彼だった。

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