第80章 再生の道へ

「…だから…刻んでるんですか…？」



忘れないように。



「ああ。少なくともその印を見れば、あいつらのことを思い出せる」



そう故人の印を見つめるリーバーの顔は、笑っていた。
どこか哀愁の見える影を落として。

きゅ、と南は唇を噛み締めた。
いつも彼はそうだ、と。

誰かに頼るより誰にも頼られることが多く、そんな自分を当たり前のものとして立っている。
こうして亡くなった仲間達のことも、一人背負い続けて。
誰にも頼らず、誰にも漏らさず、一人で抱え続けているのだ。



「それにその印見てると、不思議と仕事に身が入るんだよな」



その場のしんとした空気を壊すように、不意にリーバーは肩を竦めると砕けた笑みを見せた。



「ちゃんと仕事やれよって、サボんなよって。あいつらに見られてるみたいで」

「…班長は…いつも誰よりも、しっかり仕事をしています」

「はは、そうか？」

「はい」



しかしつられて南が笑うことはなかった。
難しい顔で俯く南に、リーバーは困った顔で苦い笑みを零した。
真面目な南がそんな顔で捉えてしまうことは、なんとなくわかっていたけれど。
やはりそんな顔をさせてしまったかと。



「Live well. It is greatest revenge.」



不意にその口から流れ出た言葉は、会話には繋がらないもの。
唐突なリーバーの台詞に、何事かと南は俯いていた顔を上げた。