第80章 再生の道へ
(な、なんだ…)
科学班の職場ではよく見かけている慣れ親しんだフォルム。
特にゴーレム管理担当である南には日常的なもので、ほっと思わず胸を撫で下ろした。
科学班開発アイテムの一つである通信ゴーレムであれば、この仕事場と化したリーバーの部屋にいても不思議ではない。
(よかった、ゴキブリじゃなくて)
G的な黒光りした虫。
そんなものが高い書類の上から滑空でもしようものなら、トラウマ決定だったと冷や汗を掻いた。
そんな南の思いなど露知らず。
ぴょこんぴょこんと書類の上で跳ねているゴーレムは、機械と言えど愛嬌のある動作。
ただ、本来はつるつるとした黒いボディが特徴であるが、そのゴーレムはふわふわとした毛玉のような姿をしていた。
珍しい、とつい興味が湧く。
「リーバー班長」
「ん?なんだ」
「班長、ご自身の専用ゴーレムなんて持ってましたっけ」
「専用ゴーレム?」
松葉杖で体を支えながら、高い書類の上で飛ぶゴーレムに近寄る。
それでも天井近くにいる小さなゴーレムは、目を凝らさないと正確な確認はできない。
「ふわふわした形の。他のゴーレムとは少しタイプが違うような気が…」
「ふわふわ?何言ってんだ…って。何やってんだ?南」
「あれです」
「?」
やっと手を止めて振り返ったリーバーが見たものは、製図台の傍に立つ南の姿。
ほら、と指差した彼女の視線の先は、高く積み上げられた書類の上。
つられて目を向けたリーバーは、天井近くで飛ぶゴーレムの姿に気付いた。