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科学班の恋【D.Gray-man】

第80章 再生の道へ



「悪い、南。怒ってる訳じゃないんだ。顔を上げてくれるか」

「は、はい。…あの。それで、班長…お話というのは…?」

「ああ…いや。ええと…」

「?」



なんとか南に顔を上げさせることはできたものの、その先へと進まない。
ガリガリと後頭部を掻きながら歯切れ悪く話すリーバーを、南は不思議そうに見上げた。

久しぶりに会った。
久しぶりに言葉を交わした。
緊張はあったが、彼は変わらず彼のままで。
ジョニーとまではいかないが、南自身、話すことに躊躇はあまり感じなかった。
しかし彼は言葉を詰まらせる何かがあるのか。



「………見舞い、行かなくてごめんな」



やがてぽつりとその口から零れ落ちたのは、小さな謝罪だった。
申し訳なさそうに呟くリーバーに、ああと南はそこで理解した。
だから彼は言葉を詰まらせていたのかと。



「そんな、気にしてないですよっ班長が仕事で忙しいのは科学班の皆から聞いてましたし…っ」



気にしていない、というのは嘘だ。
気にしていた。
気に掛かって仕方なかった。
しかし彼の仕事への姿勢を知っているからこそ、仕方ないとも思っていた。

思い聞かせていた、と言った方が正しいのだろうが。



「科学班、今人手足りてないですし。仕事大変ですよね。早く退院して仕事復帰しないと…」

「いや、大丈夫だ。こっちは俺達で回せてる。だから南は自分のことを考えてろ。あんなに深手を負ってたんだ、しっかり治さないと駄目だろ」

「それは…っ」



(それを言うなら、班長だって)



それこそ"大丈夫"ではないだろうと、南は言ってやりたかった。
上司であるリーバーにそんなことは到底言えないが。

見舞いに来てくれた他研究員達の話で、職場の多忙さは知っていた。
そして何よりリーバーのその顔を見れば、一目瞭然。



(顔…凄いやつれてるのに)



本部襲撃事件の時には、連日の徹夜で頬も扱けて酷い顔をしていたリーバー。
それよりも更に酷い目の下のくっきりと濃い隈や、生気の感じない血色の悪い肌色に、南は顔を歪めた。

体を休めないといけないのは、自分より彼ではなかろうか。

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