第80章 再生の道へ
「でもリナリーの足は検査した所、そういった変化は見られませんでした。体内にイノセンスの反応もありません」
説明を淡々と続けながら、リーバーの目が資料から一人掛けの椅子に座るリナリーの足元に移る。
真っ赤な真紅の足輪が二つ、彼女の細い足首に飾られていた。
「ただこの足に残った"結晶"…これは元はリナリーの血液だったものですが、今では全く別の金属組織に変わっているんです」
「ヘブラスカもイノセンスの反応はここからすると言ってる」
「ふぅむ」
「…成程」
続くコムイの言葉にティエドールとクラウドが頷く。
理解したのは元帥だけでなく、エクソシスト組もまた同じに。
「"血"か。適合者の体の一部…それがイノセンス化したんさな」
一早く結論を出したのはラビだった。
回る頭をフル稼働させて情報を呑み込む。
血液を媒体にイノセンス化するエクソシストなど、今まで装備型でも寄生型でも聞いたことがない。
これは確かに"異例"だ。
「これは装備型の進化型だ。適合者の血液と引き替えに、そこからイノセンス自体が武器を生成するタイプ」
「元来、装備型はイノセンスの制御が難しく科学班による"武器化"で力を抑えなければなりませんが、このタイプは血が両者の媒介になって、より強い力を制御できるものになったと思われます。恐らく武器が損傷した場合も、適合者の血液さえあれば修復も可能でしょう」
となると科学班の手による修理も不必要となる。
より強くより利便性の高いイノセンス武器。
戦いに身を投じるエクソシストなら、願ったり叶ったりであろう。
が。
「血ねぇ…」
「うーん…」
「ちょっと気持ち悪いさ…」
「グロいなぁ…」
「……けっ」
「そんな顔しないで。言ってるこっちも同じ気持ちなんだから」
素直な反応をどんよりと返すアレン達エクソシスト組に、コムイもまた小さく溜息をついた。
自動修復すると言っても、それはリナリーの血を必要とすることになる。
大切な妹に血を流させることが、嬉しいはずはない。