第80章 再生の道へ
照れてそっぽを向いてしまった可愛い人。
その人の顔が真正面から見たくって、ラビは慌てて這いずるようにして起き上がった。
「な……なぁ南…っ」
「なんか凄く腹が立つんですが何故でしょう。食後のデザートでも取られた気分」
「テメェは食いもんのことしか頭にねぇのかよ。とりあえず首を差し出せ馬鹿兎」
「はっ!?な、なんさ急に!つか殺気半端ねぇんだけど!怖ぇんだけど!?」
そこへまるで背後に獅子か龍か、そんな姿が見えそうな程に殺気を放ってくるアレンと神田。
思わずラビは逃げるように二人から後退った。
何故殺気を向けられなければならないのか。
理由なんて知りたくもないが、このままでは本気で殺され兼ねない。
冗談のようで本気だ。
本気と書いてマジと読む。
「南っ匿って!」
「え?…ええッ!?ちょっラビ…!」
咄嗟に回る頭でラビが弾き出した逃げ場は、この場で一番安全な場所。
恐らくアレンと神田が手を出さないであろう、南の背中だった。
そこに勢いのままにラビが長身を屈めて隠れれば、南もまた慌て出す。
「急に何…!」
「後生だと思って!オレまだ死にたくねぇさ…!」
「私だって死にたくないんだけど!?」
南の細い両肩を掴んで、ぷるぷると震える大きな兎。
上手く動けない南はされるがままに、慌てて声を上げるだけ。
本人達は必死だが、傍から見ればじゃれ合っているようにも見えなくはない姿。
「「………」」
これは見せつけられているのだろうか。
ぴきりと、アレンと神田の額に青筋が浮かんだ。