第74章 本部襲撃
「くそッ!こじ開けてやる!」
「待てウォーカー!」
再び左腕を掲げたアレンを止めたのは監査官だった。
「別に方法がある!こっちへ!」
「別っ?」
「方舟ゲートのある広間も塞がれていなければ、其処からこの中へ"道"を作れるはずです!」
「!」
そうか!
「じゃあ急いで───」
「ラビ!お前はこのことを皆に伝えてこい!」
「なんでさ!オレも行く!」
続こうとしたオレを止めたのはジジイだった。
南の命が危険だってのに、んな寄り道してられるかよ!
「冷静になれ!イノセンスを持たぬ今のお前に、AKUMAと戦り合う術はない!早急にこのことを皆に伝え、力ある者を集結させねば助けられる命も助けられんわ!」
「ッ…!」
ジジイの言うことは正論だった。
今オレが南達の所へ行っても、AKUMAから守ってやることはできない。
周りにこのことを知らせて、イノセンスが使える他のエクソシストや元帥達の力を借りた方が格段に救出率は上がる。
んなこと考えなくてもわかる。
「…っ」
くそ…!
「アレン!」
拳を握る。
「南のこと…頼む…ッ」
他人より南の命を優先させろなんて言わない。
でも、このドクドクと嫌な音を立てる心臓を無視することなんてできなかった。
「勿論です。絶対に助けます」
しかとオレの目を見返して強くアレンが頷く。
それはほんの一瞬だけで、すぐに踵を返して走り去った。
同時にオレも走り出す。
一番手っ取り早いのは、通信室にこのことを知らせて教団内全域に放送を入れてもらうことだ。
その後すぐにアレン達の後を追おう。
イノセンスがない今のオレに、AKUMAと戦う術はないけど。
"ラビは間違いなく、私のヒーローだよ"
優しい笑顔で、はっきりとそう南はオレに言ってくれた。
その顔と言葉を思い出して胸が軋む。
守んねぇと。
恰好良くAKUMAから守るって、言ったんだから。
…いや。
恰好良くなくたっていい。
みっともなく地べた這いずり回ったって、それで南を守れるなら。
それで南を、失わないでいられるなら。