第74章 本部襲撃
「まぁね。いくら考えてもわからないことに、いつまでも凹んでたって仕方がないし?」
目の前の大量の飯を口に運びながら笑うアレンの顔は、どこか苦さが垣間見える。
ああ…こりゃ、平気なツラじゃねぇな。
そう"言い聞かせてる"顔だ。
「それに師匠の借金より凹むことなんてありませんしね!」
「…あ、そう…」
「…小僧、お主…」
うわ、無理矢理ポジティブ。
思わずジジイと同情の目を向けてしまう。
…ま、それがアレンなりの対処法なんだろうな。
「そういえばラビ、今日全然見かけませんでしたけど…まさか南さんの仕事の邪魔しに行ったんじゃないでしょうね」
「行ってねぇよ」
行きたいのは山々だけど。
最近、本当に科学班は仕事が多忙みたいだし。
普段なら仕事中でも何かしら理由つけて、気軽に声かけに行ってたけど。
あんなにくっきりと深い隈を目の下に作って必死で仕事してる南の邪魔は、流石にできなかった。
…過労で倒れてねぇかなぁ。
南のことを考えると、最近はそんな心配ばかりしてしまう。
「今日は一日、書庫室で読書してたんさ」
「あ、そうなんだ」
読書に没頭してれば、余計なことを考えずに済む。
それならずっと南のことを気にかけずに済むと思ったけど…でもその効果は半分だけだった。
元々南とは書庫室で顔を合わせることが多くて、仲良くなったきっかけもあそこだった。
そんな南の書庫室で夜遅くまで文献に囲まれて調べ物していた姿は、オレの頭にはっきり記憶されていたらしい。
書庫室に一人でこもっていると、ふとその姿を思い出す。
…駄目だなー、オレ。
どんだけ南で頭支配されてるんさ…。
「そういうアレンは何してたんさ?あ、ホクロ二つの尋問か」
「さすがにそれだけで一日潰れませんよ。ってか潰したくありません」
「だからその失礼なあだ名はやめなさいッ!」
いいじゃん、わかり易いあだ名だろ。
ってかその額のホクロ、絶対普通のホクロじゃないだろ。
なんか赤いし。
ファッション?
あれか、インドの女性が額にお洒落で付けてるビンディーと同じようなもんか。
どう見てもインド出身には見えないけど。