第17章 赤い夫との誘拐
『電話ありがとう』
「ああ。どういたしまして。とりあえず今はこれを着てて」
征十郎は上半身裸になって私に服を着せた。
『征十郎は寒くないの?』
「別に大丈夫だ」
私は征十郎の横にのそのそと移動して三角座りをした。
「どうしたんだい?」
『寒いから人肌に触れたいの』
「それだけかい?」
『…………征十郎の横に行きたかった、です』
私は恥ずかしさのあまり膝に顔を埋める。
「よく言えました」
征十郎はわしゃわしゃと頭を撫でる。
『頭ぐしゃぐしゃになる…………』
「されるがままのくせによく言うよ」
ごもっとも過ぎて言い返す言葉も無い。そんなこんなでじゃれ合ったりしていると秘書さんが到着した。
〈やあ。持ってきてくれてありがとう〉
〈いえ。大丈夫ですよ。美桜さんは大丈夫ですか?〉
《はい。色々とご迷惑をおかけしてすいません》
私はお辞儀をして言った。
〈服はこちらで大丈夫でしょうか?〉
中を開けるとレディースのスーツが入っていた。靴まで全て。
《はい!!サイズも……ぴったりです!本当にありがとうございます》
私はシャツを取り出して体に合わせながら言った。
〈化粧品も私のですが持ってきたのでご自由にお使いください〉
《ありがとうございます…………》
私は何から何までしてもらって感謝で泣きそうになっていた。