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ゲームはお好き?

第2章 世界


病院が嫌いな氷月のために家まで走って

親も兄弟も家にはおらんかった

冷えた体を布団で包み、暖房をつけた

湯たんぽを足元に入れて体を触っても

温もりはなく、唇も青紫色になっておった

じゃが必死に生きようとしておるかのように

しっかりと息はしておった

時間が経つに連れ、顔色が少しづつ色を取り戻していく

それを見ておると心の奥底から少しづつ安心していく

夕方に柳生が俺の荷物を届けてくれた

なんのもてなしも出来ないまま帰した、罪悪感が生まれた

氷月の固く重い瞼がその日の内に上がる事はなかった

俺は飯を食うのも忘れてその部屋に留まる

夜中も眠れないままただ、ベットに横たわる人物を見ているだけ

俺は無力だった

遅くに帰ってきた両親に事を伝えれば同様を隠せなかったのか

氷月の顔を見ただけで母さんは泣き出し、父さんは悔しい表情をしておったのを覚えておる

姉は3日前から出張で帰って来んし

弟は下宿しておるため何も知らん

次の日は両親は辛そうな表情のまま仕事に向かい

俺は学校を休んで看病をする

疲れたのか昼に少しだけ眠った

誰かに呼ばれておる声で目が覚めた

既に日は半分くらい沈んでおり、部屋は真っ赤になっておった

そして、氷月は起きており俺を優しい声で呼んでおった

あの時の記憶が俺に恐怖を与えた

好きな女を目の前にして何もしてやれる事がないなんて

俺は無力だ、無力すぎた、守ってやる事の重みを知った瞬間でもあった

だから

『5月なのに、雅治がとても暖かく感じるよ』

仁「...すまん、かった」

俺の胸で儚く微笑む氷月

罰が悪そうな表情をしておる柳生

『雅治が謝る事じゃないよ。私はただ、皆に心配を掛けたくないんだ。ただの友達でいたいの』

柳生「そのような事を考えていたのにも関わらず、聞いてしまって申し訳ありませんでした」

『ううん、いつかはバレる。精市や蓮二も感づいているはずだよ。確証がないだけで聞いてこないんだと思うよ』

仁「それでも、お前さんとの約束を破ってしまった」

『いいって。これ以上、雅治に辛い思いをさせたくないから』

腕の中で儚く微笑み、俺を惑わす優しい声

あの冬の事がきっかけで

俺は氷月の事を好きになった

守ってやりたい、今度こそ、確実に
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