第79章 進展
……やっぱりだめだった。
どれだけ言っても、お金を出しても受け取ってくれない。
「もー、その話はおしまい! さ、次行くっスよ!」
折角楽しい誕生日にしようとしてくれている涼太の好意を無下にしたくない……。
……誕生日なんだから、という言葉に結局甘えてしまったんだけれど……大切なお金なのに、お金ばっかり使わせてしまっている気がして。
うう……もう、今気にしていても仕方ない。
涼太はきっと、お金は受け取ってくれないだろう。
今度、お金を返すんじゃなくて、何か物にしてお礼の気持ちを伝えよう。
うん、そうしよう。今は楽しい時間を過ごそう。
涼太に手を引かれて辿り着いた建物は、見覚えがある……そう、あの時行った建物に酷似した、ここは。
「……もしかして、プラネタリウム?」
涼太の微笑みは、肯定を意味していた。
高校生の頃、涼太に連れて行って貰ったプラネタリウム。
眼前に広がる満天の星は、忘れようとしても絶対に忘れられない。
あの時の気持ちだって、昨日の事のように覚えてる。
「目立つとアレだから、開演間近になったらはいろ」
涼太はそう言って、チケット売り場の脇に入ったところのベンチに座った。
どうしよう……嬉しい。
また、見れるなんて。
繋がれたままの手も、密着した太腿も熱くて。
ほっぺたまで熱いから、やっぱり酔っぱらってるんだろうか。
「みわ、やっぱり酒強いんスね」
「えっ、そう?」
「オレの方が弱いかもしんないっスわ。今度はゆっくり宅飲みしよ」
「うん!」
そうだ、ゆっくりおうちでお酒を飲むのもいいかもしれない。
これからは、あきともお酒を楽しむ事が出来る。
少しずつ色んな楽しみが増えていくの、本当に贅沢だなぁ。
そして、黒髪眼鏡涼太と開演ギリギリに会場に入って、座席につこうとして、足を止めた。
座席……座席というか、目の前にあるのは、雲……?