第2章 “エース”を連れ戻せ
やっぱ王手を決めてしまうのは日向かー・・・あのコミュ力の前ではどんな人も折れちゃうよな。
「いや、俺多分瀬戸が説得してなかったら旭は行こうと思わなかったと思うよ」
「え・・・?」
スガ先輩の表情は真剣さを纏っている。その瞳から冗談の類を言っているのではないと理解した。
「俺、昨日の瀬戸の説得、旭の気持ち凄く動かしてた。だって旭、瀬戸が頭下げた時、ホントに泣きそうな顔してたんだ・・・・」
「!!」
「きっと一人で背負い込んでたから、瀬戸の言葉が嬉しかったんだ・・・・だから、ありがとう。瀬戸」
スガ先輩の華の様に暖かな笑顔に、胸の辺りが熱くなる。ただ“ありがとう”という一言が、こんなにも嬉しいのは初めてだった。目頭が緩やかに熱を帯びる。くそう、泣かせないでください優し過ぎます。でも泣かない。私は強い子。ちゃんとお礼言える。
「いえ・・・・こちらこそ、ありがとうございます・・・」
「!」
「・・・・先輩?どうかしましたか・・・?」
「瀬戸、笑った・・・?」
「! 気の所為だと・・・・・・」
「いや笑ったベ!ちょっとだけだけど!」
「わ、笑ってないです・・・!」
自分で気付かない内に笑ってたのか・・・・。これは何だか気恥ずかしい。
―――でも、自分も少しずつ、変われてる、のだろうか。