第1章 瞳の先
「スガ?!お前何してんだよ?!」
「え、え、い、痛い、えっえっ…?!」
「い、いやごめんごめん!!」
菅原先輩のチョップが直撃してきた……。
いやむしろ私の頭が先輩の手に突っ込んでいたというべきか。一回はやったりやられたりしますよね。無防備な友達の頭にチョップの形の手をスタンバイさせて、何も知らない友達が頭を上げて「うわぁやったなぁ!」みたいな微笑ましいこと。
いやそれは友達同士だから良いですよ。初対面の先輩、しかも男の先輩にやられたんですよ。もうこれ嫌われてるとしか思えない。
「菅原先輩…私の事嫌いならはっきり言ってくれて良いんですよ…」
「いやいやいやいや全然違うよッ!!そんな消え入りそうな声でそんな事言わないで罪悪感がカンストしそうだから!!」
「スガお前瀬戸になんて酷いこと…!」
「大地顔こわッッ!!!」
主将から再び黒いオーラが出てる。菅原先輩は真っ青な顔で否定する。
「瀬戸のことが嫌いだからしたんじゃないだよ!何か瀬戸が緊張してて堅苦しいから和ませようと!!」
「そんな和ませ方しか思いつかなかったのか…?」
「え、え~~と、いやそんな…え~~と…」
主将顔笑ってるのに笑ってない。
何を言ってるのかわからねぇと思うが俺も何を言ってるのかわからねぇ…!
あの主将の真っ黒笑顔を一人で受け止めてるなんて菅原先輩なんて勇者なんだろう。最終ボスの魔王にたった一人で挑んでるようなモンですよこれは。
とりあえず私は僧侶にでもなりましょう。元はといえば上手い返しが出来なかった私の所為だし(ボソッ)。