第5章 何度でも
ずっと続くと思っていた幸せが続くはずも無く。
ボクはあっという間に卒園を迎えた。
多忙な父は相変わらずで、
式にだけ参加するとサッサと帰ってしまった。
他の園児の保護者は先生達に挨拶しているって言うのに。
両親に手を引かれ帰っていく同級生の後ろ姿が羨ましくて、
眺めていると何時もの優しい指先がボクの頭に触れて名前を呼ばれた。
「征十郎くん。」
「センセイ。」
「卒園おめでとう。」
何時もよりオメカシした先生は桜色の洋服を着ていた。
「センセイ。ボク、サクラがみたい。」
一瞬困ったような顔をした先生は、ボクの手を握ると「花は見れないけど。」
と二人で桜を眺めたあの場所へ一緒に向かった。
桜の樹の下へ辿り着くと、先生はあの時みたいにボクを抱え上げた。
「花は未だだけど、蕾が大きくなってるでしょう?」
「うん。」
「もうすぐしたら、春を告げる花が咲き始めるの。」
「センセイ?」
「ん?」
「ボク…センセイがダイスキだ。」
「先生も征十郎くんが大好きよ。」
「センセイ、ボクとのやくそくおぼえてる?」
「覚えてるよ。」
「ボクが、かならずむかえにいくからまってて。」
「フフッ。」
先生が優しく微笑む。
「なんどうまれかわってもぼくたちはであえる。
だから、まってて。」
ボクはセンセイのほっぺにチュ…とキスをした。
その瞬間…どこからか舞い降りてきた桜の花びら。