第18章 殺伐の春
切「サイレンサー、ってなんスか?」
『消音器の事です。銃の発砲音を抑えるための装置です』
丸「発砲音を消してまで殺したかったのか」
幸「2人、ね」
相手はそこまで手練れではなかった
此方に武器がなかったからアイツらは逃げれた
僕が銃を持っていたら、アイツらは生きていないだろう
真「精市、これからどうするんだ?氷月1人にしてしまえば今日みたいな事がまた起こってしまう」
幸「そうだね」
仁「登下校は俺が送ってやれる」
柳生「授業中では私が」
南「体育の着替えは私がついてるよ」
ジャ「問題は」
柳「マネージャー業だな」
『いつも通りでいいのでは...』
切「ダメッス!氷月先輩は自分の体の事を心配してくださいッス!」
丸「ちなみに、「マネージャーなのに選手に迷惑が掛けられない」ってのもダメだぜぃ」
幸「部活中は俺達から離れない事だね。俺達の内、誰かが氷月の隣を立っている事だね」
『なんの罰ゲームですか...』
仁「皆、お前さんの事が心配なんじゃよ。仲間としてな」
『......』
そんな優しい微笑みを見せれば僕は何も言えなくなる
今日はこのまま解散となって仁王君と一緒に帰る
仁「腕は大丈夫なんか?」
『はい、痛みには鈍感なので』
仁「...俺が呼んだ時か?」
『はい?』
仁「俺が不意に呼んだから、お前さんに隙が出来たんじゃろう」
『いえ、これは僕が甘かった証拠です。仁王君のせいではありません』
仁「...そう、か」
『はい』
罰の悪そうな表情のまま前を見据えた
背後に気配が迫っている
先程の人達の可能性は高い
『仁王君、部活で走った所悪いですが』
仁「?」
彼の右手首を掴んで僕は耳元で囁いた
『一緒に、逃げてください』
仁「!』
僕は彼の手首を掴んだまま走り出した
道の開けた街路樹は視界がいい
音も良く聞こえるし、少し暗い方が逃げやすい
暫く走った後、マンションが見えた来た所で
細い路地に入った
そこにあった太い電柱の背後に身を潜めた
仁王君の背中を電柱にあて、肩で息をしている彼の口元に手を持っていく
『静かに、息を潜めてください』
体を密着させるような形で道を見た
急に走った事により密着している彼の体から
ドクンドクンと速い鼓動が聞こえた