第2章 プロローグ
私は知らなかった。
この街のことを、この街で起こったことを、この街で起こることを。
でも、きっと此処ではそれが、日常のように見えてしまうのだろう。
非日常に慣れた人間は、非日常さえも日常に感じてしまう。
だから私も、そうしよう。
そうすれば怖がることも、嫌がることも、時期になくなっていくはずだ。
例えどんな人と出会おうとも
──私も怖いんだ。私は“死ぬ”のが怖いんだ──
例えどんなことがあっても
──さあ、今聞こえた音はなんでしょう──
例え周りがどんなことをしていようとも
──いやいやいや、何枚入れれば俺達に見えないものが見えるのかなと──
例えどんな愛を与えられても
──愛してるわ。静雄、桜──
例えどんなものに関わろうとも
──おいちゃん達で桜ちゃんを守るよ──
例えどんな後輩がいても
──桜先輩っ、帝人先輩ってダラーズの創始者ですよね!──
全てが私の日常であり、他者から見れば非日常である。
それはそれで、別に良いと思う。
──夜桜さんが入室しました──
【あ、夜桜さん。こんばんはー】
(こんばんはです)
[ばんはー。今日は随分遅かったですね?]
(あ、はい。ちょっと荷物整理をしていたんです)
【荷物整理……?】
(はい。明日池袋に引っ越すことになったんです)
[あ、此方来るんですね]
(はいっ。あれ、そういえば甘楽(かんら)さんいらっしゃらないんですね?)
【仕事みたいですよー】
(そうなんですか……)
[どうかしたんですか?]
(あ、いえっ。少し池袋や東京について教えて頂けたらな、と思ってただけですので)
[そうですか]
「……池袋。どんなところかなー」
少女はパソコンの前で伸びをしてそういい、睡魔に襲われてそのまま眠ってしまった。
【あ、そう言えば夜桜さん、ダラーズって知ってますか?】
【あれ……】
[落ちちゃったみたいですね]
【今日忙しかったんですね……。あ、じゃあ僕も落ちますねっ。おやすみなさーい】
[おやすー。じゃあ私も]
──田中太郎さんが退室されました──
──セットンさんが退出されました──
──現在、チャットルームには誰もいません──
──現在、チャットルームには誰もいません──
──現在、チャットルームには誰もいません──