第7章 赤羽 業
「大丈夫?ののちゃん」
まただ…
また、助けてくれた。
「このガキ!なめたことしてんじゃねぇぞ!」
「ーーバコ!」
「お兄さんたち、こ〜んな小さい子狙うとかロリコンなの?」
「っ!こいつ!」
「ーーバン!」
「あっはは、見掛け倒しなの?よっわいねぇ?」
「お、覚えてろよ!」
そう言ってガラの悪い人たちは逃げていった。
「いやぁ、弱かった。大丈夫、ののちゃん」
「赤羽くん、ありがとう。本当に。」
私はまっすぐ目を見て言った。
「いいよ〜、別に。俺があいつらを殴りたかっただけだし」
「それでも、ありがと。それじゃ、帰るね」
私はニコリとして家まで走った。
(また、助けてもらった…)
なぜか自然と涙が出てきた。
なぜか頼りたくないと思った。
自分の弱さが憎い。
無我夢中で走った。
「っきゃ!」
小さな段差につまずいて転んだ。
手を見る。
(こんな小さな手で、何ができるの?制服から出もしないこんな手で、赤羽くんを少しでも支えることができるの?)
無力な自分にイラだつ。
もっと、
もっと何かあれば。
胸が苦しい。
「っ…」
ただ一人、道端でうずくまって涙をこぼした。
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「ーーガチャ」
家に入ると玄関には靴が2足。父親のと母親のだ。
(二人とも居るのか…)
「おかえり」
「…ただいま」
私はそれだけ言うと素早く自分の部屋へと入った。
いつもこう。
私の親は最低限のことだけして後は何もしない。
子供の心配なんてしない。
進路の相談もしない。私が勝手に決めて親は金を払うだけ。
常に金のことしか考えていない。
私がどうなろうと知ったこっちゃない。
学校のことを聞かれた覚えなんてない。
父親は私のことを嫌っている。
無駄に金がかかるからだ。
邪魔としか思っていない。
この制服が一例だ。
この制服は従姉妹のお下がり。
だから手が出ない。
なぜこんな制服を着せたかって?
ーー金がかからないからーー
母親は私が苦しくても助けてくれない。
私よりも金だから。
私は邪魔だから。
私はそんなところで暮らした。
ここの空気を吸って生きてきた。
だから、
だから何の役にも立たないのかな。