第5章 5話
映画は眠たくなるような恋愛ドラマでかつて私が好きだった俳優が出るからという話で逢沢くんがわざわざ調べに調べて予定していたけど途中から彼の肩を借りて寝ていた。
その隣の彼はよくわかんないとこで涙ぐみ時々ポップコーンをつまんでいた気がする。
あいつはどちらかというと私の様なタイプだったかな。
映画を終わるとランチまで1時間の余裕があるため映画館に繋がる階段を下ってすぐの雑貨屋さんで適当に暇つぶしをしたり、それぞれに合う服を選んだり試着したりだった。
いざ、レストランに入ると少し早めのせいか店から奥の壁の席はどこも空席だった。
このレストランは少し話題の店のため雑誌にこそ掲載されていなかったがそこはさつきちゃん情報で探り当てた今話題のイタリアン。
逢沢「山吹はよくここくんの?」
私「ううん、私の家族はあんまり外食はしないからね。」
逢沢「そっか、じゃあ赤司とは?」
今、あいつの名前を出されると無意識に彼の視界から消えようと目を泳がせてしまう。今の私は挙動不審だ。
逢沢「楓さ、今は俺の目を見て。」
彼の切ない声は聞きたくない、だけど。
あぁ最低だ私。こんなに思ってくれてる人を不安にさせるような事をして。
逢沢「今だけ楓は俺だけ見てろよ。」
私は彼に逆らえず顔を上げた。
静かなレストランでのランチは私と彼の時間を長く感じさせた。
今日の彼の唇はいつもより潤ってる気がした。
逢沢「この後山吹は用事あんだっけ??」
私「そうだよ。」
今はお昼時で誰もいない公園のベンチに2人。
逢沢「俺たち付き合って一年とちょっとじゃん。のはずがお祝いも何にもないとか寂しくねぇ?」
彼の言う通りギクシャクしながらも一年は続いたこの関係。彼の赤い糸は結構きつく私に絡みついたのかもしれない。
逢沢「まぁ山吹ってそんなん気にするタイプじゃねえし第一中学生だと思ってっけど。」
彼は私のミディアムの髪を軽く弄っては遊んでいた。
持っていた私の髪を全て後ろに流し、私の首周りに何か冷たいひんやりしたものをつけた。
逢沢「それ、俺から。山吹が俺のって印な。」
質素な銀のタグには私と彼の名前が彫られていた。
逢沢「俺さ、お前から離れらんなくなりそう。他の女子とか見ても何も感じんくらいに楓が好き。」